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Klotz, S.*; 小松 一生*; 鍵 裕之*; Kunc, K.*; 佐野 亜沙美; 町田 真一*; 服部 高典
Physical Review B, 95(17), p.174111_1 - 174111_7, 2017/05
被引用回数:35 パーセンタイル:81.61(Materials Science, Multidisciplinary)重水素化した氷VII相及びVIII相の圧縮挙動を、93-300K、2-13.7GPaの温度圧力領域にわたって、高圧中性子散乱によって調べた。その結果から、正確な体積弾性率B,その圧力微分B'及び常圧下での体積Vを含む状態方程式を決定した。このように決めた状態方程式は、過去のX線データと比べて氷VIIの安定領域のほほ全域を、また氷VIIIに関しては、約13GPaまでをカバーしている。両者の圧縮挙動に関して、低圧域では区別できないが、7GPa以上の圧力では氷VIIは予想以上に固くなることが分かった。これは、今回の圧力温度領域において過去の氷VIIIの研究[D.D. Klug et al., Physical Review B, 70, 144113 (2004)]で報告されている異常なフォノン硬化と関係しているかも知れない。
Klotz, S.*; 小松 一生*; Pietrucci, F.*; 鍵 裕之*; Ludl, A.-A.*; 町田 真一*; 服部 高典; 佐野 亜沙美; Bove, L. E.*
Scientific Reports (Internet), 6, p.32040_1 - 32040_8, 2016/08
被引用回数:27 パーセンタイル:60.26(Multidisciplinary Sciences)LiClやLiBrなどの水溶液は160K以下に冷やすと通常の氷ではなくガラス化することが知られている。これらを初期物質として用い、低温下で温度、圧力処理することで、塩を氷の構造中にトラップすることができ、通常では生成できない「塩氷」を作ることができる(通常、氷の結晶化に伴い、塩は氷から排出されてしまう)。今回、固溶限まで濃度を高めた組成を持つ試料に関して、上記の方法で塩氷を作成し、中性子回折実験及び分子動力学計算を行った。その結果、LiCl5.6HO及びLiBr5.6HOの組成を持つ氷は、その構造が極度に膨張し、水素結合ネットワークが完全に破壊された(つまり、水分子が結晶中で完全にランダム配向した)氷になることを発見した。この不思議な現象は、並進対称性を持つ結晶中で、水分子の回転の自由度を残すことができるという大変稀有な方法を提示している。
横谷 明徳; 藤井 健太郎; 成田 あゆみ
no journal, ,
放射線照射により細胞中のゲノムDNAに損傷が生じると、DNAが結合しているヒストンタンパク質がリン酸化されることが知られている。このような化学修飾を目印に、DNA修復タンパク質が損傷部位にリクルートされると考えられるが、そのメカニズムはまだよく理解されてはいない。化学修飾はタンパク質の二次構造を変化させることで他のタンパク質の結合が可能になると推測される。そこでこのような化学修飾がゲノムのエピジェネティックな変化を担っているという仮説の元、化学修飾によりどのような二次構造変化が誘起されるかを、円二色性測定により調べることを提案した。通常の円二色性(CD)スペクトロメーターを用いてヒストンタンパクに対する紫外線領域における予備的な測定を行ったところ、生理条件に依存した二次構造変化がCDスペクトルに現れることが明らかになった。シンクロトロン放射施設において真空紫外線領域におけるスペクトルを調べることで、さらに詳細な構造変化を追跡することが可能になると考えられる。
藤井 健太郎; 泉 雄大; 成田 あゆみ; 横谷 明徳; Herv du Penhoat, M.-A.*; Touati, A.*; Vuilleumier, R.*; Gaigeot, M.-P.*; Politis, M.-F.*
no journal, ,
電離放射線によって誘発されるDNA主鎖切断の詳細な構造について調べるために、DNA主鎖の一部であるデオキシリボース(DR)に放射光を照射し、照射中に試料から脱離するイオンの質量スペクトルや、照射前後の軟X線吸収スペクトルから、照射によるDR分子の分解生成物を予想した。真空チャンバー内で水分子を吸着させたDR分子の薄膜を試料として用いた。試料に560eVのエネルギーを持つ軟X線を照射した結果、(1)DR分子から脱離するイオンの収量が水の吸着によって減少する。(2)DR分子の軟X線吸収スペクトルが軟X線照射により変化する。(3)水分子を吸着させた試料の照射後の軟X線吸収スペクトルは、ギ酸分子(HCOOH)のスペクトルとピークエネルギーがほぼ同じであった。以上の結果から、水が吸着したDRに軟X線を照射すると、カルボキシル基(HCOO)を含む分解生成物が生成されると予想される。
泉 雄大; 松尾 光一*; 藤井 健太郎; 横谷 明徳
no journal, ,
真核生物のDNAはH2A, H2B, H3, H4と呼ばれる4種類のヒストンタンパクそれぞれ2分子が形成するヒストンオクタマーに巻きついた状態で存在し、この構造はヌクレオソームと呼ばれる。放射線などによりDNA切断が起こると、ヒストンタンパクの一部を構成するH2AXのリン酸化が広範囲に起きることが知られている。この広範囲の変化が、ヌクレオソーム全体の構造変化を引き起こし、損傷部位に修復タンパクをリクルートする際に重要な役割を果たしていると考えられる。しかしながら、その立体構造変化の詳細に関する知見は得られていない。そこで本研究では、X線を照射した細胞から抽出したヒストンH2A/H2Bダイマーの立体構造が変化しているかどうかを、円二色性(CD)スペクトル測定により調査した。その結果、X線を照射した細胞から抽出したヒストンH2A/H2Bダイマーでは、未照射のものに比べて-ヘリックス構造が増加していることを示すCDスペクトル変化が観測された。このことは、細胞へのX線照射によって、ヒストンH2A/H2Bダイマーの立体構造が変化し、新たに-ヘリックス構造が形成されたことを示す。
藤井 健太郎; 泉 雄大; 成田 あゆみ; 横谷 明徳; Herv du Penhoat, M.-A.*; Ghose, K.*; Vuilleumier, R.*; Gaigeot, M.-P.*; Politis, M.-F.*
no journal, ,
内殻イオン化によって誘発されるDNA主鎖切断の生成に関わる、吸着水分子の役割を明らかにするために、DNA主鎖の一部であるデオキシリボース(DR)に水分子を吸着させて、酸素の内殻電子をイオン化することのできる放射光軟X線(560eV)を照射した。照射中に試料から脱離するイオンの質量スペクトルや、照射前後の軟X線吸収スペクトルの変化から、内殻イオン化によるDR分子の分解過程を調べた。その結果、(1)DR分子から脱離するイオンの収量が水の吸着によって減少する。(2)DR分子の軟X線吸収スペクトルが軟X線照射により変化する。(3)水分子を吸着させた試料の照射後の軟X線吸収スペクトルは、ギ酸分子(HCOOH)のスペクトルと類似した位置にピークを持つことが明らかになった。これらの結果から、吸着水分子はDR分子の分解の抑制、あるいは分解後のイオン脱離の抑制に関わっていると予想される。さらに、水が吸着したDRに軟X線を照射したときに生じるカルボキシル基(-COOH)を含む分解生成物の生成に、吸着水分子が関わっていると考えられる。
藤井 健太郎; 泉 雄大; 成田 あゆみ; 横谷 明徳; Herv du Penhoat, M.-A.*; Ghose, K.*; Vuilleumier, R.*; Gaigeot, M.-P.*; Politis, M.-F.*
no journal, ,
これまでに、直接効果によって生じるDNA鎖切断が、糖ラジカルを中間体として生成する過程の他に、内殻イオン化後に糖分子のフラノース環が激しく分解して生じる過程があることを、放射光軟X線分光実験により明らかにした。最近、第一原理計算を用いた研究によって、水和塩基分子の内殻イオン化後の反応では、塩基と水の水素結合により、孤立塩基分子で見られたフラグメンテーションが抑えられることが予測されている。水和塩基分子で理論的に予測された物理過程が、水和DR分子においても起こるかどうかを実験的に検証するため、我々は、水和DR分子の薄膜試料を作成し、内殻イオン化後の分子変化を観測することを試みた。水和DR薄膜への照射では、乾燥DR薄膜への照射で観測された、フラノース環の分解により生じたと推測されるフラグメントイオンの収量が著しく減少した。この実験結果から、塩基分子で理論的に予測されたフラグメンテーションの抑制が、DR分子においても起こると考えられる。現在、水和DR分子のフラグメンテーションに関する理論計算を進めている。
藤井 健太郎; 泉 雄大; Krishna, G.*; Pablo, L.-T.*; Alain, T.*; Rodolphe, V.*; Marie-Pierre, G.*; Marie-Francoise, P.*; Marie-Anne, H.*; 横谷 明徳
no journal, ,
内殻イオン化によって誘発されるDNA主鎖切断の生成に関わる、吸着水分子の役割を明らかにするために、DNA主鎖の一部であるデオキシリボース(dR)に水分子を吸着させて、酸素K殻電子のイオン化閾値を超えた軟X線(560eV)を照射した。照射中に試料から脱離するイオンの質量スペクトルから、内殻イオン化によるdR分子の分解過程を調べた。その結果、dR分子から脱離するイオンの収量が水の吸着によって減少することを明らかにした。時間依存密度汎関数法による分子動力学シミュレーションの結果から、酸素K殻電子のイオン化直後(およそ10fs後)に、dR分子から水和水分子へのプロトン移動が起こっていることが明らかになった。このように水和水分子は、dR分子の分解の抑制、あるいは分解後のイオン脱離の抑制に関わっていると予想される。